LINEヤフー Tech Blog

LINEヤフー株式会社のサービスを支える、技術・開発文化を発信しています。

AI活用の鍵は「組織的な学び」にある:LINEヤフーのOrchestration Development Workshop始動

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いま、LINEヤフーで起きている変化

LINEヤフーではいま、AIを活用した開発や業務改善が今まで以上のスピードで広がっています。

生成AIを用いたコード生成やテスト効率化はもちろん、非生成AIを組み合わせた分析・運用最適化など、エンジニア発のAI活用が各所で実用フェーズに入ってきました。

こうした動きの中で、各現場で得られた知見をどう社内外に共有し、次の挑戦につなげていくか――。

その問いに対する新しい答えとして、10月30日より、LINEヤフーは「Orchestration Development Workshop」を始動しました。

この取り組みは、AIを活用した開発をさらに一歩進め、“複数のAIを連携させて創造性を最大化する”ことをテーマにした新しい学びと共創の場です。

私たち自身、このプロジェクトの立ち上げと運営に関わるメンバーとして、この記事ではその背景と狙い、そしてこれからの展望について紹介します。

公式プレスリリースはこちら
LINEヤフー、社内エンジニア約7,000名を対象に実践型のAI活用スキル向上ワークショップを開始

はじめに

AIの導入が当たり前になった今、「ツールを入れてみたけれど、生産性は思ったほど上がらない」という声を耳にすることは珍しくありません。実はそれ、LINEヤフーでも同じ課題でした。

AIを使う人は増えても、「どれだけ深く業務に活かせているか」という“活用率”には大きな差がある。そんな現状を前に、私たちは「AIを使う組織」から「AIと共に創る組織」へ進化するための新しい一歩を踏み出しました。それが、「Orchestration Development Workshop」です。

“Orchestration”という発想 ― 複数AIを連携させる新しい開発スタイル

このワークショップの名前にある「Orchestration(オーケストレーション)」は、複数のAIを連携・調和させて一つの成果を生み出すという考え方を表しています。

たとえば、Jiraのチケットから自動でコードを生成し、テスト・レビュー・Pull Request作成までをAIが一気通貫で行う。あるいは、Slackの不具合報告をもとに、AIが原因を推定し修正案を提示する――。これらはすべて、人とAI、そして複数のAI同士が連携する“協奏的な開発プロセス”の一例です。

Orchestration Development Workshopは、こうした最前線のAI駆動開発を“見るだけでなく、一緒に体験できる”社内発のハンズオンイベントです。Instructorの操作をリアルタイムで追体験し、Zoomでの会話やSlackでの質問を通じて双方向に学びを深めていきます。まさに「学びながら創る」場となっています。

組織でスケールさせる ― ギルドとDevRelが支える仕組み

この取り組みの特徴は、個人の熱意だけに頼らず、組織全体で持続的に成長できる構造を持っていることです。LINEヤフーでは、以下の3つの役割が連携する体制を設けました。

役割役割概要
DevRel Unitワークショップ全体の企画・推進を担うチーム
Guild Members各事業ドメインのエンジニアが横断的に参加し、現場視点で実践的コンテンツを提案
Technical Directors (TD)技術戦略との整合性や品質を確認し、全社レベルでのクオリティを担保

この「推進(DevRel)」「現場洞察(Guild)」「品質保証(TD)」の三層構造により、属人化せずにコンテンツの質と再現性を保ち、AI活用の知見を全社にスケールさせています。

“見るだけで終わらない”学びのデザイン

ワークショップの合言葉は「見るだけで終わらない」。登壇者の手元操作を一緒に追いながら、リアルタイムで実践することで、参加者全員が“自分のプロジェクトで再現できる力”を身につけることを目指します。

Instructor(教師役)とMock Participant(参加者代表)はZoom上で実際に会話し、同時にSlackでも参加者からの質問を拾いながら、その場で課題解決のアプローチを模索します。この双方向的な形式により、「知識を得る場」から「スキルを育てる場」へと進化しています。

ゴールは「効率化」ではない ― エンジニアの創造性を解放する

AI活用の目的は、単に作業を早くすることではありません。私たちが目指すのは、AIによってエンジニアが繰り返し作業から解放され、より創造的で価値の高い領域に時間を使えるようにすることです。

「AIがコードを書き、人間がレビューする」時代を超えて、設計段階からAIと協働し、共に開発を進める――。Orchestration Development Workshopは、その未来を見据えた第一歩です。

おわりに

今後は、社内で得られた知見をもとに、LINEヤフー Tech Blogなどの外部発信を通じて学びを社会へ還元していきます。また、生成AIに限らず非生成AIもテーマに含め、AI駆動開発をより幅広い領域に継続的に取り上げていきます。

この取り組みが、LINEヤフーだけでなく、すべてのエンジニアがAIと共に創る未来へのヒントになることを願っています。

井上 雄飛(Yuhi Inoue)

Name:井上 雄飛(Yuhi Inoue)

Description:DevRel Unit Lead。エンジニア組織全体のDeveloper Relations戦略を統括し、国内外の開発者支援や技術広報を推進。AI駆動開発やエンジニア教育施策のリードを務め、グループ横断での技術文化醸成を担っている。

山岡 滉治(Koji Yamaoka)

Name:山岡 滉治(Koji Yamaoka)

Description:メールサービスのデータAI活用推進をしながら、社内の生成AIコミュニティの運営をしています。趣味イベント運営。普段から様々なAI駆動開発ツールを用いてアプリケーション開発を行ってます。