こんにちは。LINEヤフーの永吉です。2月24日(火)、「LINEヤフー Development with Agents Meetup #2」を開催しました。
今回のMeetupは、Orchestration Development Workshop (以下、ODW)で展開されたナレッジが、実際の開発現場でどのように活用され、どのように定着しているのかを共有する場となりました。

このイベントは、東京で開催した「LINEヤフー Development with Agents Meetup #1」に続く、第2回目の開催です。今回は福岡拠点にて、AI活用を試す段階から現場に根付かせる段階へと進めるための実践事例をテーマに、登壇セッションとパネルディスカッションを実施しました。
このブログでは、イベントの様子を簡単に紹介します。
イベント概要
- 日時:2026年2月24日(火)18:50〜20:25
- 場所:LINEヤフーコミュニケーションズ株式会社 カフェスペース
- イベントページ(connpass):「LINEヤフー Development with Agents Meetup #2」イベントページ
発表紹介
ここからは、イベントで行われた発表をそれぞれご紹介します!
発表1:「1年間の育休から時短勤務で復帰した私が、AIを駆使して立ち上がりを早めた話」
上土井さんが復帰直後に直面したのは、技術的ブランク、巨大なドメイン知識、そして時短勤務と育児という時間制約の3つの壁でした。そこで選んだ戦略が、「書くより読む」。自分の担当範囲だけを実装するのではなく、チーム全体のPRを横断的にレ ビューすることで、ドメイン知識を最短で吸収しようと考えたのです。しかし現実は厳しく、情報はJiraやConfluenceに散在し、複雑なSQLや歴史ある設計背景を理解できず、レビューそのものがボトルネックになってしまいます。キャッチアップのためのレビューが、逆にキャッチアップを阻害する。この負のスパイラルをどう抜けるかが、本セッションの核心でした。

上土井さんが導入したのは、Claude CodeとMCPを活用したAIレビュードキュメントです。PRのURLを指定するだけで、関連するJiraやConfluenceの情報を取得し、変更背景や仕様を図解付きで整理したドキュメントを生成。レビュー時間60分のうち約30分を占めていた準備時間を大幅に削減しました。結果として、1件あたり約30分の短縮。1日3件のレビューを行う場合、「えらべる勤務」制度を活用し週4日勤務の場合でも、週あたり約6時間の削減となります。
時短勤務という制約の中で、この6時間は非常に大きい。単なる効率化ではなく、「成果を最大化するための再設計」だと感じました。さらに印象的だったのは、NotebookLMを「ドメインエキスパート」として活用し、仕様の背景まで深掘りしている点です。その結果、AIは単なるコードチェッカーではなく、設計の壁打ち相手となる「開発パートナー」へと進化しました。実際に、Draft PRの段階からAIレビューを活用するメンバーも生まれているそうです。最後に上土井さんは、AIを「増幅器」であり「光」であると表現しました。すべてをAIに任せるので はなく、Human-in-the-loopで共に考える。このスタンスこそが、現在のAI活用における最適解だと語ります。これは、ODWでも繰り返し語られてきた「AIは増幅器である」という思想を、個人の現場で実践した事例とも言えます。Workshopで得た学びが、現場の実践として根付いていく過程が印象的でした。
発表資料:1年間の育休から時短勤務で復帰した私が、AIを駆使して立ち上がりを早めた話(Speaker Deck)
発表2:「社内ワークショップで終わらせない業務改善AIエージェント開発」
「ワークショップは盛り上がる。でも翌日、業務にどう落とし込めばいいか分からない。」そんな問いから始まったのが、となかもさんのセッションでした。学びをデモで終わらせず、日常業務に定着させるまでの試行錯誤を共有してくれました。

となかもさんは、Yahoo! JAPANトップページの開発を担うエンジニアです。BFFを中心にiOSやBCP業務にも携わり、複数拠点・複数の技術領域が混在するスピード感あるチームで開発を行っています。Jiraで進捗は可視化されているものの、「なぜ遅れているのか」「今どの判断が必要か」というWHYは見えない——この課題が出発点でした。
転機となったのは、社内の「Orchestration Development Workshop #2」。ODWで紹介されたエージェントの仕組みを、自チームの朝会に持ち込み、実際の業務に組み込んだことが、改善の出発点となりました。Agent Development Kit(ADK)とMCPを用いてJiraと連携し、遅延要因の仮説や推奨アクションを提示するエージェントを「明日から実務で使えそう」と感じ、プロトタイプを朝会に導入します。
しかし最初のレポートは重すぎる。情報量が多く、生成にも時間がかかり、朝会の流れに馴染まない。結果として、ただの背景資料になってしまいました。そこで行ったのが、AIの改善ではなく朝会そのものの再設計です。会議構造を分析すると、Done報告に多くの時間を使い、肝心の相談や議論に十分な時間が割けていないことが分かりました。アジェンダを変更し、報告はAIに集約。朝会前にチケットを整理し、開始時に振り返りと締切確認を行う流れへとシフトしました。
さらに、レポートも徹底的にチーム仕様へカスタマイズ。
・朝会で読み切れる量に制限(30秒以内)
・詳細情報は分離し、必要な粒度のみ提示
・勤務体系や得意領域などチーム事情をプロンプトに注入
・Story Point計算などはPythonツールへ分離し高速化
こうした改善の結果、朝会は「報告の場」から「議論と対話の場」へと質的転換を遂げました。
印象的だったのは 、「技術をそのまま導入するのではなく、現場への適用設計が重要」というメッセージです。AIをどう使うかだけでなく、業務フローをどう変えるかまで含めて設計する。そこにこそ価値があると感じました。
発表資料:社内ワークショップで終わらせない 業務改善AIエージェント開発(Speaker Deck)
発表3:「AIエージェントで変わる開発プロセス―レビューボトルネックからの脱却」
「AIを使えば速くなる」は本当なのか。その問いをチームの運用という観点から掘り下げたのが、曾田さんのセッションでした。

実装をAIに任せることで開発スピードは上がる一方、PRの差分が大きくなりレビュー負荷が増大するという新たな課題が発生。実装者よりもレビュアーのほうが大変になるという、いわばレビューの逆転現象が起きていました。
そこで鍵となったのが、スクラムイベントであるレトロスペクティブ(KPT)です。
「そもそもVibe Codingをどこまで許容するのか?」
「レビューで人が細部まで見るのは本当に必要か?」
こうした問いをチーム全体で言語化し、共通課題として合意を形成していきました。
その結果、Vibe Codingは「社内利用限定」「リスクの低い機能」など条件付きで適用。さらに、Vibe Codingで作られたPRのレビューはAIに委ねるという新しいルールを策定しました。コーディング規約遵守や致命的リスク検出に観点を絞ったレビュー用Skillを整備し、レビュアーは1名+AI活用へと移行します。
条件付き適用とはいえ、画面開発において約2人日かかっていた工数が約0.5人日まで圧縮された事例も紹介されました。デザインをAIに一任する場合でも、デザイナーやProduct Ownerと事前に合意を取るなど、プロセス全体を設計し直している点が印象的です。
曾田さんが強調していたのは、「AIスキルは個人ではなくチームで導入するもの」という視点でした。既存のスクラムイベント——レトロスペクティブやリファインメント——を活用し、定期的にAIをどこまで信用するかのラインを見直す。完璧を目指すのではなく、対話を通じてアップデートしていく。こうした姿勢もまた、ODWで共有されてきた「チームでAI活用を設計する」という考え方が、現場で具体的な形となって表れた例でした。
技術の導入ではなく、チーム文化のアップデート。そのプロセスこそが、今回のセッションの本質だったように感じました。
発表資料:AIエージェントで変わる開発プロセス―レビューボトルネックからの脱却(Speaker Deck)
パネルディスカッション

後半は、オフライン限定でパネルディスカッションを実施しました。
作業チケットにどの程度の粒度で要件を書くべきか、AI活用を組織に広げるにはまず何から始めるべきか、AIのハルシネーションとどう向き合うかなどに対して、登壇者3名がそれぞれの視点から回答しました。
会場参加者からも質問が寄せられ、参加者を交えた活発なセッションとなりました。
おわりに
今回の「LINEヤフー Development with Agents Meetup #2」は、多くの参加者の皆さまにご参加いただき、盛況のうちに終了しました。登壇セッションやパネルディスカッションを通じて、AIエージェントを試す段階から実務に根付かせる段階へと進めていくリアルな取り組みが共有されました。
私たちは、AIを単なる効率化ツールとしてではなく、開発プロセスそのものを再設計する存在として捉えています。個人のスキル習得にとどめず、チームや組織としてどう活用し、どう合意形成し、どう文化にしていくかを重視しています。ODWは単発の ワークショップではなく、そこで生まれたナレッジが各チームで再解釈され、実装され、そして文化として根付き始めています。今回のMeetupは、その途中経過を共有する場でもありました。
そうした実践知を、これからもイベントやコンテンツを通じて発信していきます。ぜひ次回のMeetupでもお会いできることを楽しみにしています。
LINEヤフー福岡拠点ではイベント情報や開発者向けコンテンツを発信しています。興味のある方は、LINEヤフー Tech 福岡(connpass)やDevPods Fukuokaもぜひチェックしてみてください!


