こんにちは、ソフトウェアエンジニアの多根(@SEED0228777)です。普段は、検索領域で地域情報 検索システムのためのプラットフォームを開発・運用しております。
2025年10月11日から13日の3日間、長野県の軽井沢にて「第58回情報科学若手の会」が開催されました。LINEヤフー株式会社は、一昨年、昨年に引き続きスポンサーを務めております。また、私は幹事の1人として、本会の運営に携わっています。
今年は、当社所属の運営メンバー1名と、スポンサー発表としてご登壇いただいたメンバー1名の計2名で参加しました。本記事では、会場の様子や、LINEヤフー株式会社のスポンサー発表の取り組みについてご紹介します。
情報科学若手の会とは
情報科学若手の会とは、情報科学に関わる学生・社会人のディスカッションと交流を目的とした会です。
例年情報科学に通じるさまざまな分野から発表が行われ、専門外の分野について見識を深めたり、専門分野についてより踏み込んだディスカッションを行うことができます。
今年は総勢40人を超える方々にご参加いただき、学生と社会人が半々でした。

当社での発表
当社では2025年入社の鈴木さんによる「CLOSネットワークにおけるBGP経路交換の収束性」をテーマとした発表を行いました。データセンターで利用しているCLOSアーキテクチャとBGPの仕組みを整理し、BGPが一般には収束を保証しないこと(判定はNP-complete)を紹介しました。その上で、CLOS構成に限定した場合の収束性について、Lean 4による定理証明へ の挑戦と挫折、さらにモデル検査へのアプローチを共有しました。理論と実務の両面から、ネットワーク設計の正しさをどのように検証できるかを考える内容となりました。


他者の発表
今年の発表の傾向ですが、昨年に引き続きインフラ・低レイヤ関連の発表が多かった一方で、セキュリティ・機械学習のほか生成AIに関する発表が複数あったのが印象的でした。
どの発表も大変興味深かったのですが、3点ほど紹介します。
1. 「オープンソースソフトウェアでの解像度」
この発表ではRust製OSSコンテナランタイムyoukiである「youki」のメンテナーである@utam0k様からのメンテナー視点でのOSSへの貢献、運営が実際にどう行われているかの実情をお話しいただきました。
メンテナー視点でどういった点を気にしているかということを街づくりを用いた例や具体例を交えてわかりやすく説明していただき、より高い解像度でOSSの運営について知ることができました。
また、OSSを持続させる上で新規コントリビュータがいかに重要か、メンテナーとして新規コントリビュータを獲得するためにどのような取り組みをしているのかということも共有いただきました。
さらに、新たにOSSコントリビューターになりたい人に向けて、コントリビュートする方法を自分の例も含めてとても具体的に示していただき、大変参考になりました。
2. 「言語をWebAssemblyへ移植する」
Goodnotes LimitedのツールチェインエンジニアでSwift、Ruby、LLVMのコミッタである@kateinoigakukun様より、Swift、Rubyに「どのようにWebAssemblyを移植したか」の経緯についてお話しいただきました。それぞれの言語でWebAssemblyをサポートするにあたり、どのような苦労があったのか、実際にアップストリームコミュニティとのやり取りや直接コンタクトをするなどして熱意を強く伝えて、信頼を勝ち取るということが非常に重要であったことを説明いただき、どのようなところが楽しいのかを聞くことができ大変興味深かったです。
3. 「NixとNixOSを使って趣味k8sクラスタを運用する」
伴野 良太郎様より、自宅で運用しているKubernetes(以下、k8s)クラスタにNixOSを採用すると何が嬉しいのかを解説いただきました。
NixOSの性質上、Nixによりパッケージのビルドを行う際に、複数のマシンで再現性のあるビルドを行うことができます。
また、複数の端末にバージョンが同一のパッケージを作成でき、容易にロールバックができるといった特徴もあります。
これらの理由から、不定期に更新を行いたい趣味のk8sクラスタを管理するのに非常に良いと感じました。
そのため、自宅サーバーをNixOSに置き換えることを前向きに検討できればと思いました。
会場の雰囲気
今年は、軽井沢の自然に囲まれた研修所で開催されました。

研修所内には天然温泉もあり、自然に囲まれた中で露天風呂に入ることができ、大変リラックスできました。
交流イベント
学会という形をとっておりますが、インフォーマルな雰囲気であり、これから研究を始める方も気軽に参加できます。

カリキュラムの中には交流会もあり、今年は「System32ロシアンルーレット」という題材のイベントが催されました。仮想環境上に立ち上がっているWindowsのシステムフォルダである「System32」の中のファイルをチームごとに消し、Windowsが起動しなくなるまでにいかに多くの容 量のファイルを消せるかを競うといった内容でした。多くのファイルを削除したとしても起動自体は問題なくでき、こんなにファイルを消しても起動するのかとWindowsシステムの頑丈さに驚きの声が上がり、大盛況でした。
※仮想環境で実施しており、実環境では絶対に行わないでください。
終わりに
若手の会は、学生や社会人にとって初めて研究発表に挑戦する貴重な機会となっています。情報科学分野の持続的な発展には、若手の皆さんの存在が欠かせません。
本年も例年同様、9〜10月頃の開催を予定しております。詳細は公式ホームページおよび公式X(旧Twitter)アカウントにてご案内いたしますので、ご関心をお持ちの方はぜひご参加をご検討ください。


