LINEヤフー Tech Blog

LINEヤフー株式会社のサービスを支える、技術・開発文化を発信しています。

SIerの経験は大規模サービス運用でどう生きるのか。LINEのSRE Opsで見えたキャリアの広げ方

瀬川さん正面写真

SIerで積んできた経験は、事業会社でも通用するのか。運用やインフラ、リリース対応といったスキルは、大規模サービスの現場でどう生きるのか。キャリアを広げたいと考えたとき、多くのエンジニアが一度はこうした問いに直面します。

その1つの答えとしてあるのが、SRE Opsという選択肢です。

サービスの信頼性を支える運用の現場では、「広く経験してきたこと」そのものが価値になる場面があります。今回話を聞いたのは、SIerからLINEヤフーに転職し、LINEの運用を担うSRE Opsとして働く瀬川 勝博。実際の業務や転職の背景を通して、「SIerの経験はどこまで通用するのか」「どんなキャリアの広げ方があるのか」をインタビューで掘り下げます。

SIerから事業会社へ。キャリアを広げる選択肢としてのSRE Ops

─これまでの経歴と、現在の仕事について教えてください。

瀬川:
2020年に大学を卒業して、新卒でSIerに入社しました。そこで5年半ほどSEとして働いたあと、2025年11月にLINEヤフーへ転職しました。

今はSRE Opsとして、LINEの運用業務を担当しています。主にサーバー側のリリースやオンコール対応、アラート対応、あとは運用の自動化などを行っています。

─SIerから事業会社への転職は、多くの方が気になるポイントだと思います。ご自身としては、どういう位置づけでしたか。

瀬川:
自分の中では「キャリアを広げるための選択肢の1つ」という感覚でした。もともと強く志望していたというより、「知らない世界を知りたい」という気持ちが大きかったです。

image

SRE Opsの仕事は、サービスの安定性を実務で支えること

─SRE Opsの仕事を一言で表すと、どんな仕事でしょうか。

瀬川:
LINEの安定性を実務として支える仕事だと思っています。

私たちはメッセージングのコア部分の運用を担当しています。ここで問題が起きると、実際にユーザーのメッセージが止まってしまう可能性があります。そういう意味で、サービスの信頼性を直接支えている仕事です。

─「単なる運用ではない」と感じるのはどんな点ですか。

瀬川:
LINEはサービスの規模が非常に大きくて、求められる安定性のレベルも高いです。言われたことをそのままやるだけでは、そのレベルには到達できません。

今のシステムに対して何が必要なのか、どんなリスクがあるのかを考えながら動く必要があります。そこが単なる運用との違いだと思います。

「広くやってきた経験」が武器になる瞬間

─SIerでの経験が、今の仕事で生きていると感じるのはどんな場面ですか。

瀬川:
前職では、コードを書いてリリースもしていましたし、インフラの管理もしていました。アラートが出たら自分で原因を調べて対応することもありました。

今は運用に特化していますが、そうした経験があることで、アラートを見て「このあたりが原因かもしれない」と考えられることがあります。ソースコードも含めて全体像を見ようとすることができるのは、前職の経験があるからだと思います。

─技術的に深い専門性というよりは、広さが生きているイメージでしょうか。

瀬川:
そうですね。プログラミング、インフラ、OSといった複数の領域をある程度理解していることが、今の仕事では役立っています。

スケールが変わると、仕事の見え方も変わる

─転職して、仕事の進め方や環境で大きく変わった点は何ですか。

瀬川:
一番大きいのはスケールです。前職は100人規模の会社で、チームも最大で10人くらいでした。LINEはサービスも組織も桁が違います。

それに伴って、仕事の分担も大きく変わりました。前職ではデータベース管理やインフラ、運用などを一人で広く見ていましたが、今は運用に特化しています。

─責任範囲が狭くなったということでしょうか。

瀬川:
範囲という意味では狭くなっています。ただ、その分関わる人は圧倒的に増えました。開発者や他チーム、韓国側のSREチームなど、多くの人と連携して進めています。

─ドキュメント文化についても違いがあったと聞きました。

瀬川:
前職は口頭やSlack中心でしたが、LINEヤフーではドキュメントがしっかり残っています。何かあればまず調べると記録が出てくる。そこは大きな違いですね。

「標準化と自動化」で、信頼性を作るという仕事

─運用の中で、改善の面白さを感じるのはどんなときですか。

瀬川:
一見同じ作業の繰り返しに見えますが、実際には改善できる余地がたくさんあります。手順が完全に固まっているわけではなく、その場その場で判断する部分も多いです。

単に作業を担当するというより、「どうすればミスが起きないか」「どうすれば再現性を高められるか」を常に考えながら改善していく仕事だと思っています。

サービス自体も変化し続けているので、それに合わせて運用も変えていく必要があります。

─具体的にはどんな改善をしていますか。

瀬川:
例えばリリース作業では、ツールによって標準的な手順を定義して、ミスが起きにくい形にしています。ツールに沿って進めれば外れない、という状態をつくることです。こうした仕組みによって、運用の標準化と信頼性の向上につながっていると感じています。

あとはアラートごとにRunbookをひも付けて、「このアラートが出たらこの手順を見る」とすぐ分かるようにしています。属人化しやすい運用を減らして、チームとして安定した対応ができるようにするためにも、こうした標準化は重要だと感じています。

─改善の手応えを感じる瞬間はありますか。

瀬川:
あります。事前にリスクを想定して改善したことが、実際に問題を防いだときは特にそうですね。前より良くなったと実感できること自体も面白いです。

瀬川さん取材中写真

プレッシャーとどう向き合うか

─大規模サービスの運用はプレッシャーも大きいと思いますが、その点はいかがですか。

瀬川:
正直、プレッシャーはあります。自分の作業でLINEが止まる可能性がある、という意識はあります。

ただ、それを強く意識しすぎると逆に動けなくなってしまいます。慎重さは大事ですが、それと同時に前向きに責任を持ってやるという姿勢も必要だと思っています。

─障害対応の難しさについてはどう感じていますか。

瀬川:
システムが大きすぎて、すぐに原因が分からないことも多いです。開発者でも全体を把握しきれないことがあります。

そういう中で、チームで知識を蓄積して、次に同じことが起きたときにすぐ対応できるようにしていく。そこが難しさでもあり、価値でもあると思っています。

これから一緒に働きたい人の経験とマインド

─どんな人がSRE Opsに向いていると思いますか。

瀬川:
まずは、リリースやモニタリングといった運用の経験があることが大事だと思います。

その上で、特定の分野に特化するというよりは、幅広く理解している人。プログラミングも分かるし、インフラも分かる、というような人ですね。

あとは改善を前向きに進められるマインドを持っている人が合っていると思います。

転職で見えた「知らない世界」

─転職のきっかけについても教えてください。

瀬川:
前職で自社サービスの開発に関わったときに、受託開発より面白いと感じました。ただ、そのサービスが終了することになって、少し停滞感がありました。

ちょうどその頃に、SREのインタビュー記事を見て「面白そうだな」と思ったのがきっかけです。そこから転職を現実的に考えるようになりました。

─最初からLINEヤフーを志望していたわけではないんですね。

瀬川:
そうですね。最初は別の業界にも興味がありました。転職活動を通していろいろな会社の話を聞いて、「こんな世界もあるんだ」と知ることができました。

その中で、環境を変えてみたいという気持ちが強くなっていきました。

技術軸でキャリアを広げたい人へ

─最後に、技術軸でキャリアを広げたいと考えている人にメッセージをお願いします。

瀬川:
まずは、アクションしてみることが大事だと思います。僕自身、文系出身で、ここまで来るとは思っていませんでした。

でも、実際に動いてみると、新しい選択肢が見えてきます。知らないままでいるのはもったいないと感じました。

─ご自身の今後のキャリアについてはどう考えていますか。

瀬川:
正直、まだ明確には決まっていません。ただ、AIなどの影響で、仕事の形はこれから大きく変わっていくのではないかと感じています。

だからこそ、1つに絞るのではなく、どこに球が来ても打てるようにしておきたいと思っています。選択肢を広く持っておくことが大事だと思います。

瀬川さん正面写真