2026年1月21日、自部署の生成AI利活用を推進する有志の集まりで主催した「Hacking Fest 2025 Winter」を開催しました。
Hacking Festとは?
Hacking Fest Winterは年末年始に行った技術キャッチアップおよび個人成果を皆で発表し、開発者間の相互学習の機会を提供するために開催しています。社内エンジニアが生成AIを活用して実際の業務と日常の問題を解決した事例が、タイムテーブル順に計8つのセッションで行われました。
特に今回は、以前には試みられなかった「あなたの推しAIは何ですか?」といった簡単なアンケートを通じて参加者と積極的にコミュニケーションを取りました。また、前回の開催で収集された意見を反映してセッション構成や運営方式を継続的に改善しています。
本記事では、どのようなセッションが行われたのか、そして筆者の所感を紹介します。

セッション1:6か月後の自分のために - 日常を「記憶」するMCPサーバー制作

発表者:Sueishi Hiroki(居石洋樹)
人事評価や面談時に過去の業務を思い出すのが難しい点に着眼したセッションでした。時間がたつと自分がどのような業務を行ったのか、どのような成果を出したのかを明確に思い出すことが難しいという実際の問題から出発しました。
AIと会話の途中で業務ログを残すと自動で整理してくれるMCP(Model Context Protocol)サ ーバーを構築し、SQLiteに保管するよう実装しました。これにより長期的な業務記録を体系的に管理できる方法を提示しました。
セッション2:Agent Skills制作記 - 思ったより簡単ではなかった話

発表者:Suzuki Kosuke(鈴木康介)
Claude機能を拡張する「Agent Skills」を構築する際に経験した試行錯誤を共有したセッションでした。実際にAgent Skillsを作りながら予想外の困難とともに学んだ教訓を率直に共有しました。
段階的情報開示(Progressive Disclosure)の重要性と、AIがすでに知っている一般知識までスキル化する際に発生する非効率性について扱いました。Agent Skillsを実際に構築した経験をもとに、効果的なスキル設計方法についてのインサイトを提供しました。
セッション3:静的検知ツールによる脆弱性をなくすためのSkills活用戦略

発表者:Kwon Soonhwan(権純煥)
大規模プロジェクトの数多くのセキュリティ脆弱性レポートを解決する必要がある課題を扱ったセッションでした。大規模プロジェクトで発生する膨大な量のセキュリティ脆弱性をどのように効率的に処理するかが核心課題でした。
AI SkillsとClaude Codeを活用して複雑なライブラリ依存関係を分析し、マイグレーション優先順位を効率的に導出しました。セキュリティ脆弱性対応という実務的な課題にAIを適用した具体的な事例を紹介しました。
セッション4:プロンプトよりデータ - Claude Codeアシスタントで作る「私のコンテキスト抽出」

発表者:Kawaguchi Yamato(川口大翔)
AIのパフォーマンスは結局良質なデータにかかっているという観点から出発したセッションでした。どんなに良いプロンプトを作成しても、基盤となるデータの品質が低ければ良い結果を得ることが難しいという問題意識から始まりました。
AIアシスタントがユーザーに能動的に質問して業務中に得た暗黙知を抽出し、これをMarkdownやObsidian形式で自動資産化するシステムを構築しました。個人の知識を体系的に蓄積し活用できる方法を提示しました。
セッション5:Observabilityツールの設定をClaude Codeに学ぶ

発表者:Inoue Satoshi(井上聡士)
複雑なモニタリングおよび観測性(Observability)ツールをAIとともに学習した事例を紹介したセッションでした。初めて触れる複雑 なツールを学習する必要があるとき、AIを活用すればどのような助けを得られるのかを実際の経験をもとに共有しました。
AIにマニフェスト作成とトラブルシューティングを任せて手動作業の負担を軽減し、学習速度を高めました。不慣れな技術スタックを学習する際にAIを活用する効果的な方法を共有しました。
セッション6:ゲームのチーム戦略立案もAIとともに

発表者:Hanatani Takuma(花谷拓磨)
カードゲームのチーム戦略を立てるのに生成AIを活用した事例を紹介したセッションでした。複雑なカードゲームのルールと無数のデッキの組み合わせの中で、チームの戦略を立案する際にAIがどのように役立つかを扱いました。
NotebookLMとChatGPTを利用して膨大なゲームログとルールブックを分析し、チームの戦略的一貫性をチェックする強力なサポーターとして活用しました。業務を超えて趣味生活でもAIが有用に活用できることを示した興味深い事例でした。
セッション7:障害対応訓練のAI化の試み

発表者:Liu Wenjie(劉文杰)
既存の障害訓練は環境構築とシナリオ準備に大きなコストがかかるという欠点がありました。実際の環境を模倣し、多様な障害シナリオを準備する過程が多くの時間とリソースを消費するという問題を解決しようとしました。
GPTsを活用して仮想の障害状況を設定し、AIが訓練官の役割を果たして実戦さながらの対話型訓練が可能になるようにしました。障害対応能力強化という実務的課題にAIを適用した革新的なアプローチでした。
セッション8:式場探しで生成AIを使うのはまだ「重かった」話

発表者:Maekawa Kohei(前川剛平)
複雑な条件に合う結婚式場をAIに探してもらうという愉快なチャレンジでした。実生活で重要な決定を下す際にAIがどれほど実用的な助けを与えられるのかを実験した事例です。
AIが現実的に貸し出しが不可能な場所を推薦するなどの限界を見せており、現場の雰囲気や微妙な相性のような「体験的価値」は依然として人間の領域であることを確認しました。AIの可能性とともに現在の限界を率直に共有した意味のあるセッションでした。
個人的な感想
今回のイベントを通じて、AIが単純な補助ツールを超えて複雑なビジネス問題解決と個人の知識管理まで深く浸透していることを確認しました。
特に印象的だったのは、各セッションが実際の業務や日常で直面した具体的な問題を解決しようとする試みだったということです。MCPサーバー構築からセキュリティ脆弱性対応、個人知識管理、障害対応訓練まで、AIは多様な領域でエンジニアの創造的なパートナーとして位置づけられていました。開発者としてAIの普及が単純な効率性向上を超えて、問題解決のパラダイム自体を変化させていることを実感できました。
同時に結婚式場探しの事例のようにAIの現在の限界を率直に共有する姿も印象的でした。これによりAIはすでに優れたパートナーであり、絶え間ない探求の対象であることを改めて確認できました。今後もこのような技術的挑戦を止めず、AIと人がともに成長する文化を作っていけるよう皆とともに努力したいと思いました。


