こんにちは、LINEヤフー株式会社でテクニカルライターとして働いている古木です。私は、LINE Developersサイトの技術ドキュメントやAPIリファレンスを書く専門職としてライティングを行う傍ら、社内用語集の管理にも携わっています。
今回は、LINEヤフーの社内用語集「Words」のご紹介を通じて、社内用語集サービスの立ち上げについてや、運営方法についてお話しします。
Wordsとは何か
Wordsは、社内用語と分野別の専門用語を、テクニカルライターがわかりやすく解説した用語集です。韓国のLINE PlusとLINEヤフーのメンバーが協業して、運営を行っています。
Wordsは、社内のさまざまな部門やプロジェクトで使用されている用語とその説明を一箇所に集めて、検索しやすくすることで、社内のコミュニケーション効率を向上させています。特に、社内用語を初めて目にする新入社員が安心して業務に取り組めるよう、わかりやすい解説を心掛けています。
また、Wordsは「みんなでつくる社内用語集」をスローガンとし、ただ単に「社内用語集」としてではなく、「一緒に作る」社内用語集と位置付けています。このため、用語の追加要望や修正の要望をSlackのワークフローから誰でも簡単に行えるよう工夫しています。
Wordsの機能
Wordsの機能は、大きく2つあります。1つは「ウェブサイト」、もう1つは社内Wikiで動作する「Chrome拡張機能」です。
ウェブサイト
ウェブサイトは、用語の検索が主な機能です。用語ごとに説明ページがあり、社内用語や技術用語について内容を確認できます。
用語をテーマごとに分類して、特定の分野の用語をパッケージ化して提供もしています。たとえば、新入社員向けに「はじめての社内用語集」というテーマもあり、これは最も閲覧されるテーマの1つです。このほかにも、広告用語やプロダクトごとの技術、セキュリティなどさまざまなテーマがあります。また、新たなテーマの追加など、大きな更新があったときは、サイト上でニュースを公開して共有しています。
トップページ | テーマページ | 用語の説明ページ |
---|---|---|
Chrome拡張機能
Chrome拡張機能は、社内Wiki限定で利用できます。わからない用語があったときにその用語をクリックすると、簡単な説明をその場で確認できます。詳細を確認できるようにウェブサイトへのリンクも提供しています。
Wordsの機能について簡単にご紹介しました。Wordsのシステムの構成や、データ構造など技術的な内容については、LINE Engineering Blogの「社内用語集、LINE Wordsオープンまでの道のり」(韓国語のブログです)を参照してください。
社内用語集が作られた背景
Wordsが作られた背景として、大きく2つ理由があります。
1. 社内用語が探しにくいという問題
まず、社内用語が探しにくいという問題意識がありました。これまでも部門、プロジェクト別には各々の用語集がありました。それぞれの用語集で各領域における必要な用語は見つけられますが、すべての社内用語を一貫して見つけられる場所はありませんでした。
用語集以外にも、社内のWikiにはさまざまな情報がありますが、会社の規模が大きくなるごとに検索が難しくなり、欲しい情報を探すのが難しいという問題がありました。
みなさんも、社内の情報を見つけようとして社内ネットワーク内を探し回った経験はありませんか? いろいろと探してようやく目的の情報を見つけたと思ったら、古い情報だったり間違っている情報だったりしたことはありませんか?
信頼できる社内用語集があれば、そのような体験をしなくて済むと思います。
2. テキストコミュニケーション中心の働き方
LINEヤフーでは、Slackを中心としたテキストコミュニケーションが盛んです。そのような中で、テキスト内の用語の意味やニュアンスを新入社員が理解するのが難しいことがあります。
私は2019年にLINEに入社した際に、チャットで飛び交う「BTS」という単語が何を意味するのかわかりませんでした。これは、「Bug tracking system」の頭文字を取った略語で、プロジェクト管理ツールを指す言葉でした。このように、社内で自然に使われている言葉が、外から来た人になじみがあるとは限りません。
この他にも、ビジネス上の略語や専門用語について、利用シーンやニュアンスなども用語集の説明に盛り込むことで、新入社員をはじめさまざまな人のソフトランディングの助けになると考えました。
これらが主なきっかけとなり、2023年5月に旧LINEグループ内で「LINE Words」をオープンしました。
用語追加のプロセス
用語の追加は、次の6ステップで行われます。
- 用語の提案・選定:特定のテーマを決める、または用語追加の提案を受ける
- 説明文の執筆:日本と韓国のテクニカルライターで分担して説明文を執筆
- 担当部署によるレビュー:用語の説明に誤りがないか担当部署にレビューを依頼
- チームレビュー:テクニカルライターがクロスレビューし、文章の完成度を高める
- 翻訳:日韓英の3言語で公開できるよう翻訳
- 公開:順次公開
このように、1つの用語を公開するまでに多くのステップが存在します。特徴的な ステップとしては、チームレビューと翻訳が挙げられます。
テクニカルライターが互いにクロスレビューし、文章の読みやすさや、理解のしやすさをチェックしています。このステップがあるかないかで、文章のクオリティは大きく変わります。
翻訳では、執筆された元の言語から、別の2言語へ翻訳します。翻訳のステップでは、各言語のネイティブが関わることになっています。このため、細かいニュアンスや表現を失わずに自然な翻訳文章を提供できます。
Wordsの活用実績と成果
現在Wordsは、社内のたくさんの方に利用いただいています。以下は、直近1年間の月間利用数の推移です。具体的な数値は記載していませんが、継続的に利用されていることがわかります。
また、社内イベントでWordsを紹介する機会があったのですが、その際に「入社直後にWordsにすごく助けられました!」のような感謝の言葉を直接いただくこともありました。利用者の具体的な使い方や利用シーンも知ることができ、業務に役立っていることを実感できました。
課題と今後の活動
オープン当初は、用語の数を増やすことが一番の課題でしたが、現在はコンテンツの品質維持が課題です。現在は、3言語合計で1746語を提供しています。時間がたつにつれ、情報が古くなったり意味が変わったりしてメンテナ ンスが必要になる用語が増えてきています。それらのキャッチアップと対応を、効率的に行うことが現在の課題です。ありがたいことに、社内から更新が必要な用語について要望をいただけるので、その情報をもとにメンテナンスに努めています。
また、もともとは旧LINE社向けの用語集としてオープンしたことから、LINEヤフーのグループ全体で見ると用語がまだ偏っている状態です。全社員に引き続き価値を提供できるよう、効果的で継続的な用語追加も必要です。
これらの課題解決と並行して、利用促進にも取り組み、Wordsをより多くの社員に活用してもらいたいと思っています。そして、そのための活動を日韓の担当者で協力して続けています。
おわりに
LINEヤフーの社内用語集「Words」について、サービスの立ち上げについてや運営方法、課題についてご紹介しました。
社内での情報共有やコンテキストの共有に課題がある場合、社内用語集が解決の一助となります。また、相手が使っている用語や言語をお互いが知ることは、異なる考え方や文化を知ることにもつながります。
私たちはWordsを通じて、LINEヤフーでの知識共有を推進し、社員間のより良いコミュニケーションを支えていきたいと考えています。