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高専生がものづくりで輝く!「高専プロコン」を支えるLINEヤフーの取り組み

こんにちは! 今回は、LINEヤフーの社員が奈良県奈良市で開催された第35回全国高等専門学校プログラミングコンテスト(以下、高専プロコン)に参加し、高専生が制作したプロダクトの魅力を伝えるため、ライブ配信を行い、インタビュアーとして活動しました。

本記事では、LINEヤフーの社員であり高専卒である三上、弓削、森、加賀の4人が、高専プロコンの概要やライブ配信の様子、インタビュアーの経験を通して感じたことや学んだことに主軸をおきつつ、LINEヤフーがなぜこういったイベント支援活動をしているのかと、主催する学生向けハッカソン「Hack U」の紹介をします。

ものづくりに取り組む学生にスポットライトを

LINEヤフーでは社内外のクリエイター活動をサポートしており、その一環でさまざまなイベントや勉強会の主催や協賛をしています。

特にLINEヤフーが主催する「Hack U」という学生向けハッカソンでは、LINEヤフーの社員がサポーターとしてお手伝いしながら、ものづくりの楽しさを体感してもらい、学生からクリエイターになるきっかけを提供しています。ハッカソン最終日には、期間中に開発したプロダクトのプレゼンテーションや展示会の様子を配信しています。Hack U 自体は、さまざまな地域や学校で1年間に複数回開催しており、毎回多くの学生に参加していただいています。

Hack Uの開催スケジュールは以下をご覧ください。

https://hacku.yahoo.co.jp/

Hack Uの発表会の様子はYouTube上からご覧いただけます。

https://www.youtube.com/@HackU

高専プロコンも、同じく学生がものづくりや技術を競っているイベントです。彼らの活躍をもっと見てもらえるようサポートしたく、配信のノウハウも持ったHack Uスタッフがおじゃまして、毎年ライブ配信という形で応援し続けています。そして、その様子をまるごと公式YouTubeにてリアルタイムで配信しております。

今回の高専プロコンでも、競技のライブ配信やプロダクトのインタビューという形で学生とコミュニケーションをとりながら紹介することで、真剣にものづくりに取り組む学生にスポットライトを当てるお手伝いをしてきました。

配信を通じてものづくりの楽しさや魅力を知ってもらい、学生がクリエイターを目指すきっかけになればと考えています。

第35回高専プロコン(2024年 奈良大会) 動画一覧(YouTube)

高専と高専プロコン

高専とは、技術者を養成することを目的とした教育機関です。中学校を卒業した学生が5年間在籍し、専門的な技術と知識を身につけます。全国に国公私立合わせて58校が存在し、さらにモンゴル・タイ・ベトナムといった海外にも複数の高専が設立されています。LINEヤフーでも高専出身の社員は多く、各所で活躍しています。

高専プロコンはそんな高専生が全国から集まり、情報通信技術におけるアイデアと実現力を競うものです。海外の高専や大学も参加するNAPROCK国際プログラミングコンテストも併催されており、いくつかの海外チームも各部門に参加します。

部門は競技・課題・自由の全部で3部門です。以下から各部門についての簡単な解説を行います。

競技部門

高専プロコンの競技部門では、学校対抗でプログラミングの問題を解き、より高性能なプログラムを作成したチームが勝利します。今年の問題は、変則的なスライドパズルのような内容で、参加者は少ない手数でパズルを解くプログラムを半年かけて準備してきました。パズルのピースを一度に多く動かすと手数を減らせる一方で、計算が複雑になるトレードオフがあり、ここがプログラミングのポイントになります。

なお、今年の競技タイトルは「シン・よみがえれ世界遺産」です。大会開催地である奈良は世界遺産の宝庫といえる地域で、文化財の復元活動が行われてきました。先人たちの復元活動になぞらえた問題設定になっていて、パズルを復元させると奈良の名物が浮かび上がるようになっています。

上位に勝ち進んだチームは、パズルを解く工夫を凝らしていて、制限時間いっぱいまでプログラムに問題を解かせるチームや、パソコンを仰いで熱効率を改善させるチームもいて、会場を沸かせていました。優勝した松江高専は、盤面をあえて崩してピースの偏りを調整し、手数を減らす工夫を取り入れていました。競技部門の様子が気になる方は、ぜひ配信のアーカイブをご覧ください!

課題部門

課題部門は、毎年設定されるテーマに沿ってプロダクトを開発する部門です。

今年のテーマは「ICTを活用した環境問題の解決」です。一見すると難しそうに見える今回のテーマですが、さまざまな観点からアプローチを行った非常に多種多様な作品が集まりました。

例えば、環境問題について、情報を学んだり体験することで環境問題に対する意識を高められる作品がありました。そのような作品として、

  • 実際に街づくりを体験し、「触って・見て・考える」ことにより楽しく環境問題について考えられる「SDCs」(舞鶴高専)
  • 各教室の節電状況を可視化し、クラス単位や学年単位で節電イベントを開催できることで節電に対する意識を高められる「節電だョ!全員集合」(阿南高専)
  • 金継ぎという伝統芸能をVR 空間で体験することで、金継ぎについて気軽に楽しく学べる「金継ぎVR」(熊本高専八代キャンパス)

などが挙げられます。どの作品も、どうすれば着目した課題を楽しく体験・学習できるか綿密に設計されており、実際に体験した私たちにとっても気軽に環境問題について意識できました。

課題部門の作品たち01

他にも、地域などのコミュニティで実際に存在する課題に着目し、今までの作業を効率化したりサポートすることで地域課題の解決を目指した作品もありました。そのような作品として、

  • 画像系AI とロボティクスの2つの技術を活用し、正確で大規模な海洋調査が実現できる「SEA-VIS」(沖縄高専)
  • 役場と連携し、災害時に町民が迅速かつ安全に避難することをサポートするアプリケーション「まもるん」(神山まるごと高専)
  • 生ゴミを堆肥化し、利用者への完成した堆肥の受け渡しを支援するシステム「TerraMeal」(鳥羽商船高専)

などが挙げられます。多くの作品が実際に実証実験を行い、より作品の完成度を高めるために工夫を凝らすなど、作品に対する熱い情熱と本気度が感じられました。

課題部門の作品たち02

上記では挙げられなかった作品含めどのプロダクトも、どのようにICT を活用し環境問題を解決していくかテーマを強く意識され、見応えのある作品ばかりでした。

課題部門の様子が気になる方は、ぜひ配信のアーカイブをご覧ください!

自由部門

自由部門は、自由にテーマや課題を考えてプロダクトを開発する部門です。

課題部門と違いテーマが設定されていない分、生活の中の身近な不便や社会的課題に目を向けたプロダクトから、エンタメ性の高いプロダクトまでさまざまでした。

身近な不便や社会的課題を解決するプロダクトとしては、

  • 沖縄県民の頭痛の種である塩害を検知、予報する塩害対策アプリ「シオサビン」(沖縄高専)
  • 災害時に通信インフラが使えない中、スマホのBluetooth機能を使ってメッセージを人から人へ伝搬させる「こねくと(仮)」(群馬高専)
  • 高専の球技大会において試合の進行状況や試合予定を管理できる「SPORTSDAY」(富山高専)

などが挙げられます。実際の波及を考えた汎用性の高い作りや導入を容易にするためにコストをしっかりと意識するなど、非常に完成度の高い作品ばかりでした。

自由部門の作品たち01

エンタメ性の高いプロダクトとしては、

  • 表情だけでなく、声色から人間の表情を推定し、表情の切り替えをシームレスに実現する「エモアンプ」(福井高専)
  • 任意の単語と童謡曲から覚え歌を自動生成する「覚え歌つくるくん」(仙台高専)
  • 飼育している魚の挙動から魚の性格を診断、キャラクター化して擬似的に会話ができる「フィッシュフレンズ」(香川高専)

などが挙げられます。エンタメ性が高いだけではなく、しっかりと作り込まれていてすぐにプロダクトとしてリリースが可能なものばかりでした。

自由部門の作品たち01

自由部門の様子が気になる方は、ぜひ配信のアーカイブをご覧ください!

高専プロコンに参加して思ったこと

三上

去年から引き続きインタビュアーを担当した三上です。自由部門のインタビューを担当しました。昨年は、生成AIが大きなブームとなり多くの作品に生成AIが取り入れられており、生成AIを前提にしたプロダクトが多く出展されていました。しかし、今年はそのような作品は少なくなっており、生成AIはあくまでもプロダクトが解決したい課題や主張したいメッセージ性を補助するための機能の1つとして活用されていました。

特に豊田高専の「ふたりんごと」では、2者間のコミュニケーションを促進させる2機1セット通信デバイスを出展していました。アイデアのコアであるコミュニケーションを促進させるにはどのようなデバイスや利用方法が最適かを試行錯誤した上で、実現の難しい文字生成の部分は生成AIを活用していました。限られた開発期間やコストを考えた上で素晴らしい選択だったと思います。

開発エピソードもさまざまで、東京高専の「つくも遊歩」は10人以上で役割分担して開発したというエピソードにも驚かされました。また、会場一大きなプロダクトを持ち込んでいた香川高専の「uni」は予想通りハンダ付けが大変だったとのこと。こうして苦労話を含めた開発エピソードを楽しそうに語る高専生を見ると、本当にものづくりが好きなんだなと感じます。

高専生活の課題を解決するプロダクトも2作品ありました。特に石川高専の「どみとる」は学生寮の共有設備利用状態を管理して、IoTデバイスをふんだんに活用して寮生活のストレスを減らす実用性の高い作品で、既に寮での活用が始まっているとのことで感心しました。多くのチームが実際に想定するユーザに対して開発したプロダクトを利用してもらい、そのフィードバックをもとに改善をするという開発サイクルを回しており、非常に素晴らしいと思いました。

私も高専生時代には高専ロボコンに出場したり、コンテストにプロダクトを出展したりして、モノづくりに取り組んでいました。そして、社会人になって普段の業務の傍らで前述した「Hack U」の運営に携わっています。学生の皆さんのものづくりをサポートできる場、発信できる場を提供することで、多くの学生さんにモノづくりの楽しさを体験してもらいたいと思っています。

弓削

去年に引き続き今年もインタビュアーとして参加させていただきました弓削です。今年は課題部門のインタビューを担当しました。

さまざまな作品を拝見しまず思ったことが、課題・自由に共通して、実証実験等で既に作品を実際に使ってもらったチームの多さです。半年という短い期間では当初思い描いていたプロダクトを作りきることだけでも難しいです。そんな中、ただ作るだけでなく対象ユーザに使ってもらうことで作品を改善する工程を挟むのは、相当な準備が必要なことだと思います。このような熱い思いを込められたプロダクトを体験させていただき、「確かにこういうのが欲しかった!」「面白そう! もっと使ってみたいな」と強く感じさせる作品ばかりで、楽しくワクワクしながらインタビューができました。

また、私は課題部門を主に見させていただきましたが、今年のテーマ「ICTを活用した環境問題の解決」に対するアプローチが作品ごとに多種多様で、私が知らなかった地域や環境の課題についてインタビューしながら学ぶことができました。学生さんが実際に住んでいる地域の課題に着目し、自治体等と連携しながら作品を開発していた作品もあり、例年上がり続ける作品の完成度の高さには驚きです。コンセプトが似ている作品もありましたが、技術的工夫点やアプローチの方法はどの作品も全く異なるものになっており、高専生の開発力の高さが伺えました。

競技部門の様子も拝見しました。いくつかのチームで行われていた、最初に盤面をシャッフルし最後一気に盤面が完成される様子は、見た際に圧巻され、一体どんな技術になっているのかパンフレットを読み込んでいました。さらに驚いた点として、各チームの冷静さです。どのチームも状況や勝ち負けに関係なく冷静に競技を進めており、優勝チームは優勝が確定した瞬間も落ち着いた様子で、素直に「カッコいい!」と感じました。

高専プロコンは、私の高専生時代を含めると今回で5回参加させていただきました。参加学生側とインタビュアーという異なる役割で参加した感想として、やはり高専プロコンは非常にワクワク・ドキドキする大会だなと感じています。高専生それぞれが綿密に設計・開発したアプローチの数々には毎回驚かされ、私もエンジニアとして大変勉強になりました。高専プロコンのような熱い高専生が集まる機会をこれからも全力で応援しています。

最後に、高専生の皆さんお疲れさまでした! たくさんのワクワクやドキドキをいただき本当にありがとうございます!

高専プロコンは学生のときに参加して以来、7年ぶりに参加しました。久しぶりに参加して驚いたのは、プロダクトの完成度の高さです。機械学習やAIをはじめとした新しい技術や最新のフレームワーク等を巧みに活用し、学生とは思えないクオリティの作品が多く見られました。また、自分の作った作品について生き生きと話す学生を見て、どこか懐かしさを感じると同時に、未来の技術者たちの成長に大きな期待を抱きました。

私は課題部門のインタビューを担当しました。「環境問題」という難しいテーマに対し、学生たちが幅広い視点から取り組んでいる様子が印象的でした。ここでは、特に気になった2つの作品を紹介します。

最優秀賞を受賞した鳥羽商船高専の「Triplean」は、オーバーツーリズムによって汚れた施設を清掃するための支援を行うプロダクトです。この作品は、観光客、地域住民、市町村が少しずつ協力するというアイデアに基づいており、それぞれの負担をソフトウェアによって大幅に軽減しています。三重県鳥羽市の観光課にもヒアリングを行ったとのことで、非常に洗練されたアイデアだと感じました。

大島商船高専の「オトセパ」も非常に印象的でした。この作品は、スプレー缶などのゴミをたたいたときの音を利用して分別します。画像分析では判断が難しい、中身が入っているかどうかも判別できます。機械学習を使ってこの課題をユニークに解決している点に感心しました。

私自身、エンジニアとしてモノづくりを始めたのは、高専プロコンがきっかけでした。このコンテストを通じて、多くの学生がモノづくりを楽しく思ってほしいと願っています。また今後もこのような機会に貢献し、次世代の技術者たちの成長をサポートしていきたいと思っています。

加賀

競技部門と式典の配信を担当した加賀です。私は高専プロコンの競技部門に参加したことがあり、縁あって社会人になってからも高専プロコンに関わっています。舞台袖から高専生の活躍を見守っていましたが、プログラムがうまく動かないチームや、逆に敗者復活から勝ち上がってくるチームがいるなど、例年通りの熱い競技部門が繰り広げられていました。

今回の競技部門で印象的だったのは、参加チーム同士がお互いのアプローチをなんとなく理解していた点です。決勝のインタビューで他チームのアプローチに言及したチームもいましたし、昼食時に私の隣の席に座った学生さんたちは、他チームのアプローチを取り込めないか議論していました。各々の参加者が、他チームのアプローチを推測できるまでしっかり問題の研究をしてきたのではないかと思います。

競技部門参加者に限らず、会場にいた高専生たちはみな大きな熱量を持って大会に臨んでいました。彼ら若い技術者の活躍を世に発信する形でサポートを続けられればと改めて思いました。(彼らに追い抜かされないように、私も頑張らないといけないですね!)

最後に…今年もやります、Hack U KOSEN

LINEヤフー株式会社では、ものづくりに情熱を持つ学生の皆様向けに、「Hack U」と呼ばれる、ハッカソンイベントを開催しています。このイベントは、学生の皆様の考えるさまざまな課題解決や創作活動を支援する取り組みの一環として、定期的に開催しています。

ハッカソンは学生たちがアウトプットの場として、LINEヤフー株式会社の現役社員のサポートを受けながら、自分たちが作りたいものを企画・開発・発表する舞台です。2021年より全国の国公私立高専生限定のハッカソン「Hack U KOSEN」を定期開催しております。

そして今冬も「Hack U KOSEN 2024」が開催されます! 今年の開発テーマは「正月をHackせよ!」です。発表会はクリスマス直前というタイミングで実施されるため、来る2025年に向けて、お正月をもっと楽しく面白く幸せにできるようなプロダクトを開発していただきます。

今年も発表会は、LINEヤフー株式会社 東京オフィスである紀尾井町オフィスで実施する予定です(一般の方は発表の様子をHack U公式YouTubeにてご視聴ください)。

イベントの日程や詳細内容については開催概要ページをご覧ください。高専生が仕掛ける「正月をHackせよ!」というテーマに沿った驚きあふれるプロダクトを、楽しみにお待ちしております!

Hack U KOSEN 2024

今後もHack Uではこういった取り組みを続けてまいります。最新情報はHack Uの公式XYouTubeをフォローすると受け取れます。ものづくりが好きな方・興味がある方は、ぜひチェックしていただければと思います。Hack Uの活動をきっかけに、ものづくりの楽しさを知ってもらえたら幸いです。今後ともよろしくお願いいたします。

Name:Yuge Hayata

Description:クラウドプラットフォームエンジニアとして、社内用IaaSプラットフォームの開発・運用を行っています。

Name:Kaga Masaki

Description:社内横断データのデータエンジニア。社内共通で使えるデータを整備しています。ときどきHack Uの企画・運営もしています。

Name:Mori Atsushi

Description:LINEのAndroidアプリを担当

Name:Mikami Tetsuro

Description:Yahoo!ショッピングで検索機能の開発や運用や時々Hack Uの企画・運営もしています。夢はゴリラになって山に還ること。