LINEヤフー Advent Calendar 2023の20日目の記事です。
こんにちは。Developer Relations(以下、DevRel)の水田千惠です。私は2017年から、クリエイター(※)向けの勉強会コミュニティなどを通じて技術ブランディングに携わってきました。
本稿では、2023年10月のLINE株式会社(以下、旧LINE)とヤフー株式会社(以下、旧ヤフー)の合併以降、LINEヤフー株式会社(以下、LINEヤフー)のDevRelとしてどのように役割と向き合っているかについて、部門のミッションやゴールと合わせて紹介します。DevRelや人 材開発部門でエンジニア活躍の場づくりをしている方や、DevRel活動に興味がある方に読んでいただけると嬉しいです。
※ クリエイター:旧ヤフーでは、エンジニアとデザイナーを合わせた呼称として「クリエイター」を用いていました。
旧LINEと旧ヤフーが培ってきたノウハウをひとつに
最初にかいつまんで、両社の合併以前のエンジニアサポート体制について振り返ります。
旧LINEのDevRelでは、エンジニアや採用チームと連携し、エンジニアが自慢したくなるエンジニア組織づくりをおこなってきました。旧ヤフーのDevRelでは、旧ヤフーに所属するクリエイターの活動を社内外に発信し、クリエイターが輝く場を創ることを目指してきました。施策は社内外に向けたテックメディアやイベントの企画運営、社外イベントの協賛、エンジニアのアウトプット支援や交流促進の仕組みづくりなど多岐にわたります。また2022年には、旧LINEと旧ヤフーが合同でテックカンファレンス「Tech-Verse」を開催しました。
合併以降、この2つの組織は統合し、LINEヤフーのCTO配下にDevRelは所属しています。DevRel以外には、社員のスキルアップをサポートする部署や、OSSを推進する部署などがあります。
DevRelに所属する30名近くのメンバーは、部門やチームをまたぎながら、複数のプロジェクトで業務をおこなっています。
エンジ ニアの成長をどうサポートするか
LINEヤフーのDevRelが目指すゴールは、社内のエンジニアに成長機会を提供し続けることです。そのため、まずエンジニアの成長を促すために必要な「情報の集約、整理、発信」をおこなうことを最初のミッションとしています。
DevRel活動においても旧LINEと旧ヤフーでは、エンジニアとのコミュニケーション、役割分担、意思決定のプロセスなど、多くの面で異なるやり方がありました。そのため、統合直後のLINEヤフーには判断軸やフローが決まっていなくて迷う状況が多々あります。そういう場面に遭遇したら、まずお互いどうやってきたかの情報を出し合い、関係部門を交えながらLINEヤフーとしての新たなノウハウやルールを構築しています。
また各プロダクトが開発現場で持っているスキルやノウハウを集約し、必要な人が参照できる状態にすることも重要です。先行案件における技術導入や課題解決などの事例を参照しやすいことで、プロダクト開発が効率化し、エンジニア組織における生産性が向上するためです。
合併後におこなっている施策
上記の目標に基づき、DevRelでは次のような施策を実施しています。
サービス事例の集約と発信
新しい技術をサービス導入する過程において、社内各所で同じような試行錯誤が繰り返されています。ノウハウも部門に閉じがちです。そこで重要度の高い技術領域に関しては、組織や部門を横断的に動きやすいDevRelが主体となって、社内LTイベントを開催しています。事例紹介だけでなく、各技術領域のスペシャリストと交流できるコミュニティも併設し、エンジニアがいつでも立ち寄れる場所を目指して運営しています。まだ始まったばかりの取り組みではありますが、今後は社外向けにも展開していきたいと考えています。
エンジニア同士がゆるくつながれる場づくり
LINEヤフーでは、基本的に自宅などからテレワークで業務をおこなっています。そのため、困ったことや相談がある場合に「誰かに聞いてみる」ハードルが高くなりがちです。そこで、エンジニア同士がゆるくつながり、オンラインでも投稿やリアクションなどでコミュニケーションできるSlackチャンネルを立ち上げました。イメージとしては、出社時に同僚とフリースペースでばったり会って雑談していたら、知りたいことが解決したというくらいの体験に近づけたいです。
トップダウン&ボトムアップの双方向からのアプローチ
DevRelの強みのひとつは、組織や部門を飛び越えて、横断的なふるまいができることです。CTOやExecutive VPoEの意図を現場にわかりやすく伝えたり、逆に現場の声を集約してマネジメント層に伝えたりするために、さまざまな施策を実施できます。とくに合併後は、双方の共通言語やコミュニケーション量が不足しがちなので、それを補うためにトップメッセージを共有する場を企画したり、インタビュー記事を社内メディアに公開しています。
新旧混ざりながら、緩やかに育つエンジニアカルチャー
ご紹介したDevRel活動の中で、私は主に社内向けメディアと社外イベント協賛、社内外向けイベントの開催といった施策を担当しています。これに加えて私は、DevRel アドボケイトとしても活動しています。アドボケイトという役割は聞き慣れないかもしれませんが、主に登壇や記事執筆などを通じて、LINEヤフーのDevRel活動やエンジニアの働き方・カルチャーを、社内と社外に広く知ってもらうための役割です。
ここからは、LINEヤフーのエンジニアを取り巻くカルチャーとマインドについても触れてみます。
Engineering Culture × クリエイターマインド
旧LINEと旧ヤフーはそれぞれ、エンジニアの活動指針となる「Engineering Culture」と「クリエイターマインド」を定義していました。また旧LINEのDevRelでは、「エンジニアが自慢したくなるエンジニア組織づくり」、旧ヤフーのDevRelでは「クリエイターマインドが発揮できるため場づくり」に取り組んでいました。
エンジニアの熱量を成長や成果につなげるサポート
カルチャーやマインドには違いもあれば、とてもよく似ていると感じることもあります。両社ともに、社内有志による技術コミュニティがあり、エンジニアが自主的にイベントや勉強会を開催しています。
旧ヤフーには、iOSやフロントエンドなどの技術領域ごとに社内コミュニティがあり、プロジェクトや部門を横断して、クリエイター主体で社内外向けにLT会などをおこなってきました。その中で、クリエイターだけではできないこと、たとえば懇親会の費用負担や開催に伴う申請関連はDevRelがサポートしてきました。
また旧ヤフーには、通常タスクとは異なる役割やスキルでDevRel業務に関れる仕組みがあります。たとえばエンジニアが配信や社外向けイベントの登壇交渉をおこなったり、エンジニアがデザイン業務に携わったりすることができます。主に入社5年目くらいまでの社員が活用してきました。
実際に運用してみると、新入社員3〜4年目くらいまでの社員が活用するケースが多く、ビフォーアフターでクリエイターの成長や貢献が見えやすくなるというメリットを感じていました。旧LINEにも社内コミュニティがあり、同じく社内外のイベントを開催してきました。しかし、有志活動としてアウトプットしており、支援制度のようなものはありません。より自律的に活動しているように感じました。
現在、領域が重なっているコミュニティでは、両方から集まったエンジニ アが連携して、新しいイベントを立ち上げ始めています。コミュニティ活動への貢献が、自己の成長や成果につながるよう、DevRelとしてもしっかりサポートしていきたいです。
撮影: LINEヤフー 森本恭平
旧ヤフーからLINEヤフーへ。あらためてDevRelマインドを考える
2020年12月に、当時のDevRel活動について、Yahoo! JAPAN Tech Blogのアドベントカレンダーで記事を書きました。
クリエイターの情熱が着火点。組織や会社の壁を越えるヤフーのDevRel活動
その中で、DevRelマインドについて、「クリエイターの “挑戦したい””やってみよう”という勢いを受け止め、面白がりながら周囲を巻き込み、実現するまでいいねいいねと根気強く背中を押し続けること」としていました。
3年経って、LINEヤフーのDevRelとしての活動をスタートした今も、基本的な思いは変わりません。これまで以上に、さまざまな経験やバックグラウンドを持つエンジニアと、テクノロジーに向き合う機会が増えています。また、組織や部門、会社の枠組みを越えて熱源を発見しにいく楽しさもあります。とはいえ、初めましての方も多い状態です。そのためにもDevRelが、エンジニアからの声がけに対して、常にスタンバイ状態であることも心がけています。
以前、旧ヤフーでマーケットインテリジェンス活動をしていた頃、担当領域のレポート作成に向けてアイデアを出す際、自分の頭の中にふんわりと浮かんだトピックスを発言したことがあります。まだ言語化しきれていなかったのですが、当時旧ヤフーのCSOだった安宅和人さんが「水田さんのアンテナに引っかかったのなら、そこには何か意味合いがあるはず」と、私以上に積極的にトピックスを深く掘り下げようと提案してくれました。自分の興味関心に価値を感じられた嬉しさと、マーケットインテリジェンス活動への心理的安全性が一気に高まり、その後の活動での自信や成果にもつながりました。あのときの安宅さんが、まさに「スタンバイ状態」だったのではないかなと考えます。
相手の背中を推し続けるにはパワーが必要です。そのためにもDevRel自身も行動し、社内外にのりしろを広げながら成長し続ける組織でありたいです。
始まったばかりのLINEヤフーですが、DevRelでは今後もさまざまな施策を通じて、社内外のエンジニアにとって魅力的な情報発信、さらにはコミュニケーションの機会を作っていきます。今後ともよろしくお願いします。